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コラム:アカデミー賞最多ノミネートがNetflixという異例の事態!どうなる映画業界?!!

コラム:アカデミー賞最多ノミネートがNetflixという異例の事態!どうなる映画業界?!!

2020年2月9日と迫ってきた、第92回アカデミー賞だが、今回は以前よりも波乱を呼びそうだ。何故ならNetflix作品が最多ノミネートされているからだ。

ロバート・デニーロ、アル・パチーノ主演、マーティン・スコセッシ監督作品『アイリッシュマン』が、最も注目を集める作品賞や監督賞など10部門でノミネート。他にも、ノア・バームバック監督の『マリッジ・ストーリー』が6部門、フェルナンド・メイレレス監督の『2人のローマ教皇』が3部門と、計24部門でNetflix制作映画がノミネートされた。

第91回アカデミー賞では、同じくNetflix映画『ROMA ローマ』がノミネート、受賞されたが、反発はこの頃から続いている。というのもシアトリカル・ウィンドウに反しているからである。シアトリカル・ウィンドウとは、映画作品を二次使用する際は劇場公開開始から90日間を開けなければいけないという自主ルールである。あくまで自主ルールであるから、罰則があるわけではないが、ルールに反している作品はメジャーな映画館では上映を拒否される。

『パラサイト 半地下の家族』のポン・ジュノ監督は、以前Netflix映画『オクジャ』を韓国で劇場公開しようとしたが、映画館に拒否されるということもあった。

そのため上映施設を借りるか、独立系映画館で上映するしか手段がないが、Netflixはブロードウェイで100年以上の歴史を誇るベラスコ劇場を購入し、最新の上映機材を揃え、Netflix作品限定上映施設として確保した。しかし、この映画館は1シアターしかないため、複数作品は上映できない。

『アイリッシュマン』は11月1日から12月1日まで上映、その後も『マリッジ・ストーリー』などを上映していることから、映像作品が映画賞を受賞するには、少なくとも21日間は劇場公開する必要があるというルールに関しては、強引にパスできる環境を作り上げたのだ。

スティーヴン・スピルバーグや大物監督、多くの映画関係者は配信作品が他の一般劇場公開作品と並べられることに不満がある。スピルバーグは作品的に優れているのであればアカデミー賞ではなく、テレビ映画としてエミー賞の対象作品にしたらいいと言っているが、それも一理ある。

その一方で、映画製作に莫大な資金を提供し、ある程度の自由度も提供してくれるNetflix側に賛同する映画関係者も少なくない。回転重視のシネコンは長時間作品を嫌うため、マーティン・スコセッシの『アイリッシュマン』のように3時間超えの作品は資金集めが大変な現状もあるのだ。マーティン・スコセッシがNetflixを選んだ最大の理由は資金力と自由度である。これはクリエイターにとっては、好きなものを作れるという最大の喜びであることからNetflix側につく者も少なくない。

動画配信サービス戦国時代の今、Netflix映画を良しとしてしまうことで今後Disney+やHBO Max、Amazonなどの配信作品を強引に小規模映画館を確保して賞レースに参加してくることになれば、アカデミー賞という概念までも揺るがされる可能性はある。

時代の流れと言えば、そうなのかもしれないが、やはり映画は一般的に劇場公開された作品であってほしい。根本的な問題として、Netflix作品を打ち負かす映画が出てこれば良い、競争に拍車がかかって、良い作品がもっと作られるようになればいいというのは、あくまでも理想の世界であって、現実はそうもいかない。

何故かと言うと、圧倒的資金力、自由度は強いことと、Netflix作品はどこでも観れてしまうからである。今まで試写や劇場に行かなければならなかったものが、家でも移動中でも観れてしまうという環境は強い。アカデミー賞投票権利者もこの環境に甘んじている者は多いだろう。

映画ファンにとっては、嬉しくも悲しいことではあるが、わざわざ映画館に足を運ぶということが少なくなってきている現状もあるのだ。しかし、Netflixが今後、有名監督・俳優作品を作り続けて、シアトリカル・ウィンドウ自体もあやふやになってしまったら、今後映画業界はどうなってしまうのだろうか…

Netflixが急成長を遂げ、莫大な資金力で自社映画を有名監督、有名俳優を使って作ってきたものだから、どう扱っていいのか分からないのが正直なところだと思う。そんな今だからこそ、アカデミー賞とは別に、配信作品専門の映画賞を作るべきではないだろうか。

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