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この映画語らせて!ズバッと評論!!『MINAMATA -ミナマタ-』真実を「伝える」この意味、そして世界が与えたカメラマンの役割!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『MINAMATA -ミナマタ-』真実を「伝える」この意味、そして世界が与えたカメラマンの役割!!

作品情報

1971年、ニューヨーク。アメリカを代表する写真家の一人と称えられたユージン・スミスは、今では酒に溺れ荒んだ生活を送っていた。そんな時、アイリーンと名乗る女性から、熊本県水俣市にあるチッソ工場が海に流す有害物質によって苦しむ人々を撮影してほしいと頼まれる。水銀におかされ歩くことも話すことも出来ない子供たち、激化する抗議運動、それを力で押さえつける工場側──そんな光景に驚きながらもシャッターは冷静に切り続けるユージン
は、チッソの社長からのネガを大金で買うという申し出を拒否したために危険な反撃にあう。追い詰められたユージンは、水俣病と共に生きる人々にある提案
をし、彼自身の人生と世界を変える写真を撮る──。

『MINAMATA -ミナマタ-』レビュー

© 2020 MINAMATA FILM, LLC

私は今作を試写で2回観た。1回目は不覚にも途中で寝てしまったからだ。それぐらい平坦な空気感のストーリー展開であるため、映画的な娯楽性は、ほとんどない作品である。

もともとジョニー・デップという役者はくせ者俳優ではあったが、近年においては、客層がどうしても娯楽性を期待してしまっている部分があって、そういった期待や先入観は捨てておいた方がいい。

ユージン・スミスという人物を美化して描きすぎている感じがしてしまうものの、それは置いといて、戦争や事件において「伝える」という役割を果たすのがカメラマンやジャーナリストであり、その「伝える」力を改めて感じさせる力作という印象が強い。

戦争や災害の被害者の姿を撮る際に生じる葛藤というのは、今まで数多くのカメラマンやジャーナリストを主役とした作品では、よく描かれることではあるし、その都度、自分が今できることは何なのかの自問自答を強いられることになる。

不幸な人の姿を撮ることで、不謹慎という人もいるだろう。実際にそれによってギャランティが発生しているの事実ではあるが、ありのままの姿を伝えることで、同じような事件や過ち、あるいはその写真を見た世界中の人々からの支援を獲ることで復興の手助けに繋がるのも、また事実。

水俣病に苦しむ親子を被写体に、写真を撮る姿を見ると、ユージンが水俣病というものをアート的な感覚で捉えていると錯覚してしまうかもしれない。そう言われれば、そういった側面がないとは言い切れないが、その写真が世間にどう影響をもたらすかが必要であって、下手な写真よりもアート的で美しい写真に仕上げることで、世界中の人の目に触れることも必要なことである。

ピントがぼけた下手な写真よりも、写真そのものがアートとして独り歩きすることで、日本や水俣を知らない人にまで情報が伝わる。偽善的に「良い」「悪い」ではなくて、それもひとつの手段なのだ

現在の世の中は極端に偏ってしまっていて、何が正しいのか、何が捏造なのかがわからなくなっている。視聴率のために新型コロナの恐怖心を煽る大手メディアの堂々たる報道姿勢には、疑問しか感じられず、そこに異を唱える者は、輪から出されてしまう。正しい報道とは何なのかが崩壊してしまっているのは、今でも変わっていないことには憤りを感じずにはいられない。

ジョニー・デップの演技が極端に素晴らしいとも思わなかったが、『モータルコンバット』でもお馴染みの浅野忠信や真田広之、最近は國村隼も人気なようで、2000年代からあまり変わり映えのない日本人俳優が、いつも通りというべきか定番の演技をみせている。海外からの日本俳優イメージは、この20年であまり変わってないことを痛感する。

出演:ジョニー・デップ、真田広之、國村隼、美波、加瀬亮、浅野忠信、岩瀬晶子and ビル・ナイ
作品コピーライト:© 2020 MINAMATA FILM, LLC  
提供:ニューセレクト株式会社、カルチュア・パブリッシャーズ、ロングライド 配給:ロングライド、アルバトロス・フィルム
2020年/アメリカ/英語・日本語/115分/1.85ビスタ/カラー/5.1ch/原題:MINAMATA/日本語字幕:髙内朝子
公式サイト:longride.jp/minamata/

点数 77

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