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復活!テレビっ子だっていいじゃない!『変身忍者嵐』変身ブームに便乗した冒険的時代劇ヒーロー

映画ばかり紹介していますが、実はテレビ番組も大量に観てきている超テレビっ子なんです。そんな超テレビっ子である私が独自の視点と独断と偏見でテレビ作品を紹介する企画「テレビっ子だっていいじゃない!」

昼ドラやゴールデンタイムドラマに関しては、また別企画で語りたいと思うので、この企画では特撮とアニメに絞って紹介していきます。

かなり久しぶりな今回は『変身忍者嵐』

時は「第二次怪獣ブーム」「変身ヒーローブーム」真っ只中の1972年。斬新さを求め続けた異色の時代劇変身ヒーロー『変身忍者嵐』

1971年からスタートした『仮面ライダー』によって巻き起こった、等身大の変身ヒーローブームの熱が冷めないうちに、朝日放送は次の一手として、『仮面ライダー』放送中に新たな等身大ヒーローを生み出すことを決意。

『仮面ライダー』と撮影が被らないように、時代劇の撮影がメインの東映京都撮影所を使用することを想定して、『仮面の忍者赤影』の脚本家であった伊上勝によって、赤影に変身ヒーロー要素を組み込んだような「時代劇版仮面ライダーのような作品」企画としてスタートした。

そのこともあってか、企画書の第1稿『謎の仮面剣士』においては、赤影の要素が強すぎてボツとなってしまう。

第2稿の『仮面の忍者「嵐」』はタイトルこそ、赤影を連想しないではいられないものではあったが、内容としてもキャラクター設定としても原作者の石ノ森章太郎のテイストが色濃く反映されており、本シリーズに近いものとなっていたが、この段階では、嵐は変身というより仮面をかぶるタイプだったりと、赤影要素をぬぐい切れていなかった。

最終的に『変身忍者嵐』として企画がまとまったのは、1971年の年末。

撮影する予定だった京都撮影所から、『仮面ライダー』と同じ東映生田スタジオで撮影されることになり、町中のシーンは日活撮影所が使用されたが、ほとんどが『仮面ライダー』や他の東映特撮ヒーロー番組ではお馴染みの多摩川や柿生の農村といったロケ地での撮影がされたため、時代劇だというのに、崖や岩山で戦うシーンがやたらと多い作品となった。

なにはともあれ、制作にこぎつけた『変身忍者嵐』は斬新な設定の作品であり、『仮面ライダー』に並ぶ変身ヒーローとして大ヒットが期待されていたが、1週間早く、ピープロによる同じ時代劇変身ヒーロー『快傑ライオン丸』がスタート、さらに裏番組として『ウルトラマンA』がスタートしてしまったことで、思わぬ苦戦を強いられてしまう。

『快傑ライオン丸』は、ピープロが60年代後半からネコ科の動物を主人公とした特撮ヒーローを企画していて、『豹マン』といったパイロット版も制作されたが、これは実現せず、ライオンをモチーフにして「ライオンマン」という現代を舞台とした作品が企画された。

ところがアメコミの「ブラックパンサー」に似ていることが指摘され、『仮面の忍者赤影』の変身ヒーロー版を作ろうという路線に変更されたことで、ある意味、赤影からインスパイアされた作品が偶然にも同時期に誕生してしまったのだ。

『変身忍者嵐』の場合は、本家の脚本家である伊上が企画・脚本を務めていることもあるのに加え、『悪魔くん』や『河童の三平 妖怪大作戦』といった水木しげる原作の特撮作品をいくつか手掛けてきていたこともあって、怪人のモチーフとして、妖怪や悪魔が積極的に採用されたのも差別化のひとつになった。

60年代後半~70年代前半にかけて「妖怪」が一種のトレンドであり、大映が68年に『妖怪大戦争』、ゲゲゲの鬼太郎のアニメ第2期も71年からスタートしていたこともあって、タイミング的にはよかったのかもしれない。

しかし、それでも「第二次怪獣ブーム」真っ只中ということもあって、様々な特撮ヒーロー番組が視聴率を争って、どう差別化するかを試行錯誤しながら、成功例は惜しみなく便乗する行為も目立った。

中でも露骨に現れていたのが71年にスタートした『シルバー仮面』。シルバー仮面は放送当初は等身大ヒーローであったのだが、同時期の『ミラーマン』に対向するかのように途中から『シルバー仮面ジャイアント』に名前が変更になったほどで、巨大ヒーローの人気の方が高いのは一目瞭然であった。

当時はテレビも家に一台というが一般的で、ビデオもなかった時代。

『ウルトラマンA』に視聴率を奪われる日々が続いたことで、『変身忍者嵐』も何度もテコ入れされ、路線も変更になった。

流石に『シルバー仮面』のように巨大化はしなかったものの、かなり実験的なことが行われていた。

番組を観ていた子供たちは、そういった大人の事情を知るワケもなく、数々飛び出す新設定や突然の設定変更に戸惑うというよりも、むしろ楽しんでいた。

一方、スポーツ界からのゲスト出演も話題となり、第31話にはプロボクサーのファイティング原田、32話には力士の高見山大五郎、36話には「キックの鬼」として知られる沢村忠などが出演を果たしたが、沢村の場合はトランクス姿というファイティングスタイルそのままに登場したことで、時代劇という設定よりもゲストを活かすという暴挙にも出たのだった。

実現はしなかったものの、これまた時代設定と全く違う仮面ライダーと滝和也を登場させるエピソードも検討されていたとか…

『ウルトラマンA』側も油断ならないと焦ったのか、ウルトラ兄弟の設定を積極的に取り入れるようになり、ゾフィーやウルトラセブンなど、過去シリーズのウルトラマンたちが再登場、ウルトラの父も初登場を果たした。

「仮面ライダースナック」が人気を博した菓子メーカーのカルビーも「カルビーテレビスナック」という同じくカードが付いたシリーズとして『変身忍者嵐』と『ウルトラマンA』の両方を発売していたこともあり、商品展開でも争っていたのだ。

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