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この映画語らせて!ズバッと評論!!『レリック -遺物-』誰にでも起こり得ることをホラーテイストで描きながら、現実問題という余韻を残す!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『レリック -遺物-』誰にでも起こり得ることをホラーテイストで描きながら、現実問題という余韻を残す!!

作品情報

森に囲まれた家でひとり暮らしをする老女エドナが突然姿を消した。娘のケイと孫のサムが急いで向かうと、誰もいない家には、彼女が認知症に苦しんでいた痕跡がたくさん見受けられた。そして2人の心配が頂点に達した頃、突然エドナが帰宅する。だが、その様子はどこかおかしく、まるで知らない別の何かに変貌してしまったかのようだった。サムは母とともに、愛する祖母の本当の姿を取り戻そうと動き出すが、変わり果てたエドナと彼女の家に隠された暗い秘密が、2人を恐怖の渦へと飲み込んでゆく…。

『 レリック -遺物- 』レビュー

(c) 2019 Carver Films Pty Ltd and Screen Australia

未公開スルーな予感がしていた『レリック -遺物-』が小規模ながら劇場公開されたことは、とりあえず喜ばしいことだ。

今作は日系オーストラリア人監督のナタリー・エリカ・ジェームズの長編初監督作品となるが、日本にいる祖母を久しぶりに訪ねた際に、認知症によって別人のように変わってしまっていた実体験をベースにした物語であり、ホラーコーティングしているものの、描かれていることは、誰にでも身近に起き得ることである。

3世帯を通して描かれるという点にも意味があって、別人のようになってしまった、その対象の人物が「母」であるか「祖母」であるかによって、また見え方が違ってくる様子がケイとその娘サムの目線を通して伝わってくるのだ。

ケイの場合は「母」であることから、今まで育ててもらった恩だったり、長い間会えていなかった後悔なども入り混じりつつも、自分の手に負えないという不安もある。一方、サムの場合は「祖母」であって、少し距離感のある関係ということもあり、責任が直接的ではないことからも、その目に映るのは「可哀そう」という印象が強かったりもする

超常現象ホラーのようでありながら、基礎となっているのが日常にある問題というのが、より恐ろしく感じるの同時に、切なさも強烈に伝わってくる。

アンソニー・ホプキンス主演の『ファーザー』は、認知症の視点から見た世界がサスペンスのように描かれていたことが斬新に感じた作品であったのに対して、割と家族の視点からの作品というのは、豊富にあるし、今までのホラーの中にも、精神疾患や認知症といったものへの日常的不安が悪魔や心霊となって表現されきた作品はあるのだが、ホラーテイストに仕上げながら、身近な問題という絶妙な距離感を保ったことは、今作の特徴であり、大きく評価できる点である。

自分の身近な人物、大切な人物が全く別の存在になっても、存在そのものは内側からも外側からも変わらないとしたら、それでもその人を愛し続けられますか…という問いを極端な角度から求めてくるような作品ともいえるだろう。

登場人物が比較的少ないことに関しても、結局は「家族」の問題でしかなく、周りは何もしてくれない。という皮肉のように感じられた。

(c) 2019 Carver Films Pty Ltd and Screen Australia

クレジット

監督:ナタリー・エリカ・ジェームズ

脚本:ナタリー・エリカ・ジェームズ / クリスチャン・ホワイト

製作:アンナ・マクライシュ / セイラ・ショウ / ジェイク・ギレンホール / リヴァ・マーカー

製作総指揮:ジョー・ルッソ / アンソニー・ルッソ / マイク・ラロッカ / トッド・マクラス / アンジェラ・ロッソ=オトストット / ワン・チョンジュン / ワン・チョンレイ / フー・ジュンイー

撮影:チャーリー・サロフ

美術:スティーヴン・ジョーンズ=エヴァンズ

編集:デニス・ハラツィス / ショーン・ラヒフ

音楽:ブライアン・レイツェル

音響デザイン:ロバート・マッケンジー

衣装:ルイス・マッカーシー

メイク&ヘア:アンジェラ・コンテ

出演:エミリー・モーティマー / ロビン・ネヴィン / ベラ・ヒースコート

2020年 / オーストラリア・アメリカ合作 / 英語/ 89分 / シネスコ / カラー / G

原題:RELIC / 日本語字幕:ブレインウッズ / 配給・宣伝:トランスフォーマー

公式HP:transformer.co.jp/m/relic

(c) 2019 Carver Films Pty Ltd and Screen Australia

8月13日(金)シネマート新宿ほか全国公開

主な映画賞受賞・ノミネート歴

2021年 クリティクス・チョイス・スーパー・アワード ホラー映画賞ノミネート

2021年 ゴッサム賞 作品賞、観客賞ノミネート

2021年 ハワイ映画批評家協会賞 最優秀ホラー映画賞受賞

2021年 ハリウッド批評家協会賞 ホラー映画賞ノミネート

2021年 ナショナル・ボード・オブ・レビュー トップ10インディペンデント映画賞受賞

2021年 女性映画批評家オンライン協会賞 ブレークスルー監督賞ノミネート

2021年 フェニックス批評家サークル賞 ホラー映画賞ノミネート

2021年 リフレーム・スタンプ トップ100人気実写&アニメ映画賞受賞

2020年 オーストラリア・アカデミー賞 6部門ノミネート

(作品賞・監督賞・脚本賞・助演女優賞・ヘアメイク賞・音響賞)

2020年 オーストラリア監督協会賞 長編監督賞ノミネート

2020年 フロリダ映画批評家協会賞 作品賞ノミネート

2020年 フライト・メーター賞 ホラー映画賞・脚本賞・助演女優賞・楽曲賞ノミネート

2020年 IGNサマー・ムービー賞 ホラー映画賞ノミネート

2020年 Indiewire批評家投票 初監督作品賞ノミネート

2020年 エトランジュ映画祭 作品賞ノミネート

2020年 シッチェス・カタロニア国際映画祭 監督賞・脚本賞受賞、作品賞ノミネート

2019年 オーストラリア脚本家協会賞 脚本賞ノミネート

(c) 2019 Carver Films Pty Ltd and Screen Australia
(c) 2019 Carver Films Pty Ltd and Screen Australia

点数 87

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