
THE映画紹介とは?
THE映画紹介とは…劇場公開中には観れなかったもの、公開中に観たんだけれども…レビューする前にリリースされてしまったもの、単純に旧作と言われるものを独自の偏見と趣味嗜好強めに紹介するもの。
アメリカ映画、インド映画、ドイツ映画、アジア映画、アニメ、ドキュメンタリー….なんでもあり!!
今回紹介するのは『家族の四季 -愛すれど遠く離れて-』
作品情報

父に背いて自分の愛した女性とイギリスに旅立った長男、なんとか家族の絆を取り戻そうとする次男。大富豪一家がさまざまな問題を克服していくさまを描き上げる。インド映画界のスターたちが豪華共演した家族ドラマ。ヒットメーカーのカラン・ジョーハルが監督を務め、カラン作品には常連であるシャー・ルク・カーン、カジョール、ラーニー・ムケルジーも『何かが起きている』に続き共演を果たしている。
『家族の四季 -愛すれど遠く離れて-』基本情報

2001年製作/210分/インド
原題: Kabhi Khushi Kabhie Gham…
監督: 『マイネーム・イズ・ハーン』『何かが起きている』 カラン・ジョーハル
出演 :
『チェンナイ・エクスプレス』『勇者は再び巡り会う』シャー・ルク・カーン
『WAR ウォー!!』『クリッシュ』リティク・ローシャン
『勇者は再び巡り会う』『トリバンガ ~踊れ艶やかに~』カジョール
『あなたを夢みて』『ポンペイ・トーキーズ』ラーニー・ムケルジー
『ピンク』『華麗なるギャッツビー』アミターブ・バッチャン
『きっと、うまくいく』『ラ・ワン』カリーナ・カプール
短評

財閥の息子ラーフルと旧市街の町娘アンジャリとの「身分の違う恋」によって、一度はバラバラになってしまった家族の再生を描いた物語。
インドは特にカースト制度の名残がまだあるとはいっても、身分の違いによる家族感のもめごとというのは、別にインドに限ったことではないし、特に2000年代は韓国ドラマがそんなテーマを頻繁に描いていたように感じる。
2000年代の日本のドラマが逆に「今風」を突き進む中で、逆行するかのような昭和ドラマ的なストレートなものを良く感じた人が韓国ドラマに向いていたこともある。インド映画はアメリカへのリスペクトもある中で韓国も意識していて、実際に『アジョシ』『怪しい彼女』なんかもリメイクしていることもあるし、カランの『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』もベースとしては『glee』『ゴシップガール』と韓国や台湾の学園ドラマへのオマージュもあるような気がしてならない。
つまり、2000年代のアジア圏エンタメは、王道路線と多文化リスペクトの中で形成されていくというひとつのラインが出来上がっていたのかもしれない。
今作もベタと言ってしまえば、そうかもしれないが、良い意味でストレートに「家族が離ればなれでいるなんておかしい」という家族ドラマが描かれている。
直接的に描かれていないながらも、身分の違う男女の恋というテーマが、自然とカースト制度の名残、概念に父や母としての立場から断ち切り、それでも子供の決断を尊重できることができるのか…ということと、子の立場からは、親に背いてでも好きになった相手のために家族との縁を切ることができるのか…という、両極端ではありながらも、「家族」の本質とは何かを、どんな国でも共感できる物語に仕上げておきながら、ちゃんとインドへの風刺的なものも盛り込んでいて、ベタな中に、かなりの量の情報量が詰め込まれている。
音楽の使い方も「ここで泣かせます!」というほどベタな使い方をしてあるのだが、そこが間違ったポイントではないため、直球で感動させられてしまう。ミュージカル・シーンに関しても、今作に関しては舞踏会のようなものの場合だったり、メタファーとして挿入されていることもあって、すごく自然だ。
ラーニー・ムケルジーの役が、お嬢様なのにラーフルのために身を引く姿も泣かせ所。カランは悔しいほどに泣かせ所を上手く扱っている!!
またリティク・ローシャンが演じているローハンが丁度、両極端であったものの間に位置する、当時としては新たな概念や価値観を持った人物としての役割を果たすことが、2000年代に入り、インドという国が変化していった分岐点のようにも感じられる。
ラーフルたちがイギリスに移住し、そこのグローバル色漂う学園や街、そしてショッピングモールといった、インドの時代遅れな風景とは真逆のものを対照的に映すことにも狙いがあったのではないだろうか。
ここから20年間をかけて、カースト、ジェンダー、貧困、エンタメなどの全体的に過渡期にシフトしていったようにも思える。
カランがプロデューサーとして参加している『ディア・ライフ』もインドの今を知る上では、大切な作品であったが、2000年代としては、この作品が持つ意味はすごく大きかったのではないだろうか。
カランは時代の変化に伴い、それを作品に巧みに反映させてきているからこそ、いつ観てもその時代を切り取ったようなものに感じられるのだ。
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