7月8日から公開される『ブラック・ウィドウ』に続き、日本でも9月3日に公開が決定した『シャン・チー/テン・リングスの伝説 』だが、新型コロナでMCUがことごとく延期になり続けたことの付加価値によって、薄れがちになっているが、今作は観てわかる通り、明らかなる中国マネーを期待した忖度映画である。
『モータルコンバッド』の評でも話した通り、海外におけるアジア人のイメージというのは、偏見や勘違いではなく、現代のアジア人は、外国文化を取り入れ過ぎていて、 外見上でキャラクター的特徴を持たせるのが難しいことを理解した上で、あえてステレオタイプなアジア人像を押し出している。
シャン・チーというキャラクターはもともと、ブルー・スリーが原型にあるだけに、そのキャラクター自体がステレオタイプの象徴であり、それをMCUに組み込むというのは、冒険的であり、時期も難しかったと思う。
アベンジャーズのシリーズにもたびたび参加しているだけに、サブキャラクターとして登場させること自体は難しくないまでも、単独映画というのは、ハルクの単独映画よりもハードルが高かったようにも思える。
中国マネーを意識していなければ、正直言って、踏み出せない領域だ。
ハリウッドが近年、中国マネーに支配されつつあることは、様々な映画から色濃く伝わってくるものの、実は中国側が少し飽きてしまっている傾向にあるし、今作の製作開始時期と、武漢ウイルスなどと騒がれ、アジアンヘイト問題のある現在では、また少し事情が変わっている。
以前はアジア人がメインキャストを演じるアメリカ映画が少なかった中で、サブキャラクターのひとりとしてでも、ハリウッド大作に中国俳優が出演しているというのが名誉でもあったわけだが、その扱いだけでは満足できなくなった中国側。
どれもステレオタイプなイメージだったり、偏ったキャスト。例えば近年であればアジア系の女優=オークワフィナ、コンスタンス・ウー、ベテランであればミシェル・ヨーといったキャスティングの固定化も飽きられている。
一方で『唐人街探偵 東京MISSION』のような、近年公開されている中国の娯楽映画を観ても、目の細いステレオタイプな中国人像よりも、韓国や日本同様にアイドル顔俳優の方が国民としては観たいという考えが圧倒的に強い。
それは当然といえば当然。日本も日系だからといって、例えばマシ・オカが主人公の日本人代表と言わんばかりなアクション映画があったら、嬉しいだろうか?
つまりステレオタイプな中国人像を世界に発信するアメリカ映画に嫌気がさしつつあり、製作側の意識と中国側の欲求が上手く噛み合っていないのだ。
だからこそ、この『シャン・チー/テン・リングスの伝説』や次に待機する『エターナルズ』も中国公開ができないのではないかと言われている側面がそこにあるのだ。
習近平がプーさんに似てるという理由から『プーと大人になった僕』が中国公開できなかったということは、アニメ『サウスパーク』の中でも、散々ディスられた本当にあったネタ話であるが、ステレオタイプなルッキズムは、中国に媚びていたとしても、意外と検閲が厳しい気がしてならない。
この状況から考えても、爆発的なヒットでもしない限り、シャン・チーというキャラクターが、今後登場する可能性はあったとしても、アイアン・フィストとの共同作にするとか、ある程度の工夫がなければ、単独の続編の可能性は低いとしか言い様がない。
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