初の映画本『発掘!未公開映画研究所』の出版が待たれる映画評論家・映画ライターのバフィーによる徹底アカデミー賞分析。
■主演男優賞
リズ・アーメッド 『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』
チャドウィック・ボーズマン 『マ・レイニーのブラックボトム』
アンソニー・ホプキンス 『ファーザー』
ゲイリー・オールドマン 『Mank/マンク』
スティーヴン・ユァン 『ミナリ』
■助演男優賞
サシャ・バロン・コーエン 『シカゴ7裁判』
ダニエル・カルーヤ 『ユダ・アンド・ザ・ブラック・メサイア』
レスリー・オドム・Jr 『あの夜、マイアミで』
ポール・レイシー 『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』
レイキース・スタンフィールド 『ユダ・アンド・ザ・ブラック・メサイア』
今回の主演男優賞・助演男優賞は、なぜこのようなノミネートになっているかを考えると答えが簡単である。
アメリカでは劇場公開され、同時にHBO Maxでも配信された映画『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア』は、日本においては、扱っているテーマがブラックパンサー党のものであり、HBOとの独占配信権を発表したU-NEXTは映画作品に関しては契約外ということで、日本公開が全くの未定状態。
今回の『マ・レイニーのブラックボトム』もNetflix映画だったからこそ日本でも同時配信されたが、これが劇場公開映画であれば、今の段階では、まだ観れていなかった可能性が高い。
黒人社会を扱った作品というのは、なかなか日本では劇場公開が難しく、アカデミー賞にノミネートされた『フェンス』でさえも公開されない点や、タイラー・ペリーが製作するような黒人のコメディ、ラブストーリーも公開されていないことを考えると、あまり期待しない方が良いかもしれないが、未公開か配信スルーでは、いずれ観られるようにはなるはずだ
話を少し戻すと『ジューダス・アンド・ザ・ブラック・メサイア』という作品を観てわかることは、助演賞のダニエル・カルーヤは、どうみても主演としか思えない…それでは何故、助演になっているのかを考えると答えは出る。
まず今回のアカデミー賞の中で一番固いというか、ほぼ確定なのは主演は『マ・レイニーのブラックボトム』のチャドウィック・ボーズマンである。
英国アカデミー賞ではアンソニー・ホプキンスが受賞したものの、ほとんどの映画賞でチャドウィックが受賞している。それは、亡くなってしまったことへの追悼の意味を込めてという部分が大きく、良くも悪くもチャドウィックにどうしても票を入れないといけない風潮にあるだけに、ここを崩すのはアメリカ国内の映画賞では難しい。
単純に『マ・レイニーのブラックボトム』での演技が評価に値するだけに、受賞しても同調圧力と考える人も少ないだろう
正直言って、今回の主演男優賞においてチャドウィック以外のノミネート俳優は、ゲイリー・オールドマンもスティーヴン・ユァンも噛ませ犬だと思われる。
ならば…なぜそこに、どう観ても主演のダニエル・カルーヤをノミネートしなかったのだろうか…
答えは簡単で、ダニエル・カルーヤの演技が素晴らしいからである。
チャドウックとダニエルを主演対決でぶつけるのは、両者にとって可哀そうという考えから、あえてダニエルは助演にノミネートさせたというのが私の見解である。
となると…主演男優・助演男優はかなり固い!!
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