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この映画語らせて!ズバッと評論!!『ザ・スイッチ』クリストファー・ランドンが手掛けるホラーとコメディの定番ネタ祭り!!

作品情報

透明人間』『ブラック・クリスマス』などホラー、サスペンスの話題作やヒット作を数多手がけるジェイソン・ブラムが製作、「ハッピー・デス・デイ」シリーズのクリストファー・ランドンが監督を務め、気弱な女子高生と連続殺人鬼の身体が入れ替わってしまったことから巻き起こる恐怖を描いた異色ホラー。家でも学校でも我慢を強いられる生活を送る冴えない女子高生のミリー。ある夜、アメフトの応援後に無人のグラウンドで母の迎えを待っていた彼女に、背後から指名手配犯の連続殺人鬼ブッチャーが忍び寄る。鳴り響く雷鳴とともにブッチャーに短剣を突き立てられたミリーだったが、その時、2人の身体が入れ替わってしまう。24時間以内に入れ替わりを解かなければ、二度と元の身体に戻れない。ミリーは新たな殺戮を企てるブッチャーを相手に、自分の身体を取り戻そうとするが……。『名探偵ピカチュウ』『明日への地図を探して』のキャスリン・ニュートンがミリーに扮し、ブッチャーと入れ替わり後は手当たり次第に殺戮を企てる殺人鬼を熱演。一方、中身は女子高生で自分の身体を取り戻そうするブッチャーを『ドッジボール』『ファイティング・ファミリー』のヴィンス・ヴォーンが演じた。

『ザ・スイッチ』レビュー

監督が同じ『ハッピー・デス・デイ』とのユニバース化の噂もあった今作であるが、突然おかしな現象に苦しむという点では共通点ではあるし、ユニバース化できないことはないという印象は残るものの、ちょっと無理はありそうだが、『ハッピー・デス・デイ』の第3弾が企画されていることもあって、それ次第とはいえるだろう。

全体的なネタとして、入れ替わりもの映画としては、リンジー・ローハン主演で『フォーチュン・クッキー』というタイトルでリメイクもされたり、ミュージカル化もされて、さらにミュージカル版映画も制作された、定番中の定番のディズニー作品『フリーキー・フライデー』がベースとなっている。

フリーキーは「異常な~」とか「奇妙な~」という意味であって、直訳すると「奇妙な金曜日」つまり、その金曜日が13日の金曜日で殺人鬼と入れ替わったら…という『フリーキー・フライデー』と『13日の金曜日』をコメディ・アプローチ強めにオマージュしたものであり、『フリーキー・フライデー』という作品の存在がなければ、たどり着かない発想であることは間違いない。

邦題となっている「スイッチ」とは、入れ替わる際に使用されるワードではあるのだが、『ザ・スイッチ』というタイトル…実は2016年のディズニー・チャンネル映画に同名の邦題を付けてしまっている作品がある。邦題を付けた人は調べなかったのだろうか…

男女が入れ替わる設定の作品は今までにもたくさんあったが、女子とおじさんが入れ替わる作品としては、ロブ・シュナイダー主演の『ホット・チック』や近年の日本映画『レオン』などがあったし、あくまで導入部分として、殺人犯と入れ替わるという意味では『天国と地獄〜サイコな2人〜』というドラマも最近放送されていただけに、斬新かといえば実はそうでもない。

ヴィンス・ヴォーン演じるブッチャーのキャラクター造形がよくわからない点が多く、そこをダメな点ととらえるのか、『13日の金曜日』のジェイソンがたまにみせるユーモア、同じブラムハウス作品でいえば『ハロウィン』でも感情がないとされるマイケルがトイレに隠れている相手に、殺した相手の歯をパラパラと落として驚かせる行為のような、感情が欠けているはずなのに、ユーモアがあったり、計算したような行動をとる場合もあるという、ホラー映画ならではのツッコミ所をメタ要素として入れていると、とらえるかによって観方が変わってくるのではないだろうか。

外見はどうなっても、大切なのは中身、見た目とのギャップがあるというのを、屈折した描き方を通しながらも、なかなか直球に描いた作品ともいえる。

ミリーの外見が明らかに違っていても信じて、危険をおかしてくれる友達2人もそうだし、ミリーの片想いの相手ブッカーがスポーツ部の男性至上主義のような考えのキャラクターかと思いきや、実は心が優しく、入れ替わっている状態のミリーに心を動かされる様子は、かなりコミカルなシーンのひとつであるが、感動できる部分でもある。あえて言うなら、お姉ちゃんも気づいてくれていれば直良かった。

はじめキャスティングを聞いたとき、もっと殺人鬼にみえるようなキャスティングが良いのではないかとも思った(例えばダニー・トレホ、マッツ・ミケルセンなど)のだが、 ヴィンス・ヴォーンは今回、抜群な役割を果たしているし、別の楽しみ方も与えてくれている。

大男でコミカルな演技もできて対照的にシリアスな演技もできるとなると、ヴィスは納得できるし、両極端な作品に出演しているからこそ、コメディ映画パターンのヴィンスとシリアス映画版のヴィンスが共存した映画としても観ることができるのだ。

ハッピー・デス・デイ2U』のように、入れ替わる原因となった短剣の原理の答えが判明するというSFアプローチであれば、ユニバース化もできそうな感じはするし、最終的に宇宙を支配している謎の存在がいるという『キャビン』のようなメタ構造であれば、いくつかの常識的な原理を覆す作品をひとつにまとめてしまうということはできなくもない。

あまり言うとネタバレになってしまうが、エンドクレッジットのシーンは、『ザ・ボーイズ』シーズン2のタコ殴りシーンや2018年版『ハロウィン』の3世代共闘シーンに通じるものがあって、とてもスカッとする

点数 80

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