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この映画語らせて!ズバッと評論!!『パーム・スプリングス』進むべき先は安定の今か不安定な未来か!!

作品情報

カリフォルニアの砂漠のリゾート地パーム・スプリングスを舞台にしたタイムループ・ラブコメディ。パーム・スプリングスで行われた結婚式に出席したナイルズと花嫁の介添人のサラ。ナイルズのサラへの猛烈なアタックから2人は次第にロマンティックなムードになるが、謎の老人に突然弓矢で襲撃され、ナイルズが肩を射抜かれてしまう。近くの洞窟へと逃げ込むナイルズとサラは、洞窟の中で赤い光に包まれ、目覚めると結婚式当日の朝に戻っていた。状況を飲み込むことができないサラがナイルズを問いただすと、彼はすでに何十万回も「今日」を繰り返しているという。『ブリグズビー・ベア』のアンディ・サムバーグが主人公サム役を演じ、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』に出演したクリスティン・ミリオティ、『セッション』でアカデミー助演男優賞を受賞したJ・K・シモンズらが顔をそろえる。監督は本作が長編監督デビューとなるマックス・バーバコウ。

『パーム・スプリングス』レビュー

ドキュメンタリーや短編をメインとしていたマックス・バーバコウにとって、長編監督デビュー作となるのが今作。予算が限られているのだろう、今作に出演している俳優は、映画よりもテレビドラマに多く出演しているドラマ俳優が多い。

スーパーガール』『スーパーマン&ロイス』のタイラー・ホークリンや『リバーデイル』のカミラ・メンデス、『ゾーイの超イケてるプレイリスト』のピーター・ギャラガーといった、ドラマファンであれば、観たことのある顔ぶれである。

アメリカではHuluが権利を取得し、独占配信された作品となっているのたが、『リトル・モンスターズ』『ハピエスト・ホリデー 私たちのカミングアウト』と同じように日本では、Huluでは配信されず、今作は劇場公開作品として扱われることとなった。

日本のHuluの運営権が日本テレビにあるからなのか、どうも長編作品やDisney+からの流れ企画ドラマは、Huluの作品ながらHuluでは配信できない環境にあるらしい

同じ出来事、同じ日を繰り返す「ループもの」というSFのサブジャンル作品ではあるのだが、良くも悪くも今作において特徴的なのが、タイムループに至る理由、仕組みが全く示されないことである。

日本でも『時をかける少女』や木曜の怪談の『怪奇倶楽部』の中にもそんなエピソードがあったが、同様に変えなければならないもののメタファーのようにも描かれていた。

近年の作品でいうと『ハッピー・デス・デイ』という作品があったが、これは殺人犯を突き詰め、解決することによって、そのループから抜け出すことができるという目的があり、続編となる『ハッピー・デス・デイ2U』では、そのタイムループ自体の原理について解明していく、SFホラーへと変貌したことで注目されたわけだが、こういった作品は主人公が乗り越えなければならないもの、変えないといけない事実がある種の壁となっている。

しかし、今作の場合、ループの仕方については判明しているものの、それが何故なのかが全くわからないのである。戻れるようになる理由も、精神的なものではなく、物理的な方法だったりする。

特に主人公のナイルズは「愛」に疲れてしまっている。彼女が浮気していても、気にならなくなっている様な、かなりの無気力人間で、人生に対しての意味を見いだせていないだけに極限の状態ではなく、人間関係に問題が少しぐらいあったとしても、別に元に戻らなくても問題がないところが逆に問題だったりもする。

ついには考えなくなり、無限に続くループを満喫していた中、サラもタイムループに巻き込まれてしまうことで、一旦はループを受け入れたはずのナイルズの心のバランスが崩れていってしまうというものであるが、実は同年2020年にAmazonブライム作品として、同じく他者を巻き込んだタイムループ作品があった。それは『ザ・スイッチ』のキャスリン・ニュートン主演映画『明日への地図を探して』である。

『明日への地図』はドラマ性を重視したものではあるが、今作は、かなりユルいテイストではあって、あくまでコメディ色が強い。

変わらない平温な日常の現在と、愛があっても不安定な未来をどちらをとるのかという「究極の愛」「自分の生きる道」が示されるかどうかが、どちらの作品も共通点となっている。

「ループもの」は、自分ひとりの世界になった様な気がしてしまう孤独感が主人公を元に戻ろうと思わせる原動力であったりするが、他者もいたらどうなのか…という、「ループもの」の隙間を発見した作品ではあるが、残念なことに2作連続してしまったことで斬新さは薄れてしまった。

このコロナの影響を受けてしまった時代、失ってしまったものが大きい。感染の恐怖に足を止め、留まって現実逃避して生きるのか、それとも再び動き出した社会に戻っていくのかという現実問題が皮肉にもリンクしてしまっている。

サラ役のクリスティン・ミリオティがアリソン・ハニガンに似ていて、表情のひとつひとつがコミック的で観ていて飽きない点も注目点だ。

点数 81

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