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この映画語らせて!ズバッと評論!!『すくってごらん』原作のテイストは完全無視なんだけど別物としてみればクオリティは高い!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『すくってごらん』原作のテイストは完全無視なんだけど別物としてみればクオリティは高い!!

作品情報

エリート銀行マンが左遷先で出会った金魚すくいを通じて成長していく姿を描いた、大谷紀子の同名人気コミックを実写映画化。これが映画初主演となる歌舞伎俳優の尾上松也と「ももいろクローバーZ」の百田夏菜子が共演する。些細なことにより左遷され、東京本社から片田舎の町へやってきた大手メガバンクのエリート銀行マン・香芝誠。荒んだ気持ちを抱えていた香芝は、左遷初日に金魚すくいの店を営む美女・吉乃と運命的な出会いを果たし、彼女に一目ぼれをする。生来のネガティブな性格と左遷のショックから心を閉ざし、仕事だけを生きがいに生きていくことを心に決めていた香芝だったが、吉乃のことがなかなか頭から離れず、なんとか彼女と仲良くなろうとするが……。監督は『ボクは坊さん。』『ラスト・ホールド!』の真壁幸紀。

『すくってごらん』レビュー

原作漫画は、金魚すくいを競技として扱った、なかなか斬新な漫画であるのだが、映画版は金魚すくいという本流のテーマからは離れてしまっていて、原作ファンは納得ができない作品になっていることだろう。

ストレートに描いても、それなりにおもしろい作品になったと思うだけに、ちょっと変化球なアプローチをしたことが謎でならないのだが、これはこれで意外と悪くはない。

和製ミュージカル映画は少ないとはいっても、『嫌われ松子の一生』『舞子はレディ』、問題作としては『恋に唄えば』なんて作品があるが、キャスティングに問題があるのか、歌手経験のない俳優に唄わせる傾向が強いため、どうしてもチープになりがち。

しかし、今作のキャスティングは大前提として、唄える俳優を起用したということで、歌唱力に関しては問題ないどころか、元劇団四季の柿澤勇人や数々のミュージカル舞台経験者石田ニコルなども参加していることで、ハイクオリティな歌唱シーンが作り上げられていて、和製ミュージカルの好き嫌いはあるかもしれないが、近年の和製ミュージカル映画としては、間違いなくトップクラスといえるだろう。

主演の尾上松也も歌舞伎役者であり、ディズニー映画『モアナと伝説の海』のマウイの歌も吹替えしていたとこともあり、とにかく声が通る。英語ラップなどにも挑戦しているのだが、何よりも注目なのが顔芸だ。

『半沢直樹』では、他の歌舞伎俳優が顔芸を披露する中で、キャラクター的に顔芸枠ではなかった反動からなのか、『半沢直樹』では観られなかった顔芸が連発する。

ももいろクローバーZの百田夏菜子も、和服で奥ゆかしい役を演じ、ピアノを弾くという、ビジュアル的にあまり観られないような役をやっていたりと、様々ナチャレンジ精神のあふれた映画であることは間違いない。

実際の撮影は橿原市をメインに撮影が行われたのだが、舞台となっているのは、金魚のまちとして知られる奈良県大和郡山市。日常から金魚に囲まれている場所であり、古き良き日本の風景が広がっていないる。

今では他国の文化によって薄れがちになり、日本自体が日本らしさを失いつつある中で生きる現代人の目線から見ると、ファンタジーの世界のようにも感じられてしまう。

金魚アートもそんな世界観の表現を後押ししている。金魚アートというと吉田洋主演の映画『ラブ×ドック』の中でもアーティスト・木村英智による金魚アートが印象的ではあったが、今作の中の金魚アートも幻想的で見応え十分である。

メインテーマであるはずの「金魚すくい」自体が薄れがちになってしまっているという問題点がある作品ではあるし、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのか良くわからない結末ではあるが、とにかく突っ走った映画であって、妙な清々しさが残る。

点数 82

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