ラジオ番組「バフィーの映画な話」Spotifyなどで毎週配信中!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『ラーヤと龍の王国』アメリカで活躍するアジア系俳優をかき集めた声優陣からなるディズニー製「クレイジー・リッチ!」

この映画語らせて!ズバッと評論!!『ラーヤと龍の王国』アメリカで活躍するアジア系俳優をかき集めた声優陣からなるディズニー製「クレイジー・リッチ!」

作品情報

龍の王国を舞台に少女の戦いと成長を描くディズニーの長編アニメーション。聖なる龍たちに守られた王国。人びとが平和に暮らすその王国を邪悪な悪魔が襲った。龍たちは自らを犠牲に王国を守ったが、残された人びとは信じる心を失っていった。500年の時が経ち、王国をふたたび魔物が襲う。聖なる龍の力が宿るという「龍の石」の守護者一族の娘ラーヤは、王国に平和を取り戻すため、姿を消した最後の龍の力をよみがえらせる旅に出る。監督はアカデミー長編アニメーション賞を受賞したディズニーアニメ『ベイマックス』のドン・ホールと、実写映画『ブラインドスポッティング』のカルロス・ロペス・エストラーダ。2021年3月5日から劇場公開と同時にDisney+でも配信(追加料金が必要なプレミアアクセスで公開)。

『ラーヤと龍の王国 』レビュー

新型コロナウイルスの影響でアメリカ人が中国人嫌いになる前の、チャイナマネーを意識した『ムーラン』と同じく中国忖度映画ではあるが、多様性が求められる現代社会において、サイクル的にアジア系のディズニー・プリンセスが登場するという流れは、ごく自然な流れだといえるのだが、今回はタイミングが少し悪すぎた。

ディズニーといえば、ミュージカルと言っていなかったとしても、結果的にミュージカルになるところが、好き嫌い別れるとはいえ、王道のディズニーアニメ映画の基本であり、良くも悪くも特徴的なテイストだといえるのだが、今回はそれを省いてしまっている。

オークワフィナは、『ザ・プロム』の主演候補でもあっただけに、声優陣をみる限りでは、ミュージカルでイケそうな気はする。

とは言っても、ハリウッドやアメリカのドラマ、映画業界で活躍しているアジア系俳優たちをかき集めた様なキャスティングの雑さは正直、目立ってしまっている。

『クレイジー・リッチ!』の脚本家アデル・リムが参加していることもあって、ディズニー版「クレイジー・リッチ!」のようなキャスティングになっているのだが、アジア系だから、とにかくアジア系ばかり集めておけば間違いないという風潮は、映画業界における日系だろうと韓国系だろうと、アジア人俳優はみんな同じ枠組みという印象をアジア系自身が作り上げてしまっている気がしてならない。ちょっと急ぎ過ぎているのではないだろうか。

これもポリコレの影響かもしれないが、あまりうるさ過ぎると、外観としての体裁は保てたとしても、表現の自由が失われてしまう。

ミュージカルの失った部分を補うのが、ラーヤとシスーの掛け合いであり、今作の最も楽しめるポイントであるため、シスーのヒップホップ的なノリとオークワフィナは上手く融合しているのだが、贅沢を言うのであれば、ここはティファニー・ハディッシュ。ティファニー姉さんの出番だったように思える。

これは考え過ぎかもしれないが、ほとんどの主要キャストはアジア系なのに、ペットでラーヤが乗り回しているトゥクトゥクの声優だけがアラン・テュディックというのは、アメリカ人はペットという印象を与えないだろうか。アラン・テュディックは今までにも『ベイマックス』や『ズートピア』などで毎回声優を務めているため、その流れであることは間違いないのだが、今回は違う役にしてあげた方がよかったのではないだろうか...せめてトゥクトゥクもアジア系俳優にした方がよかったのでは?中途半端な部分が深読みさせてしまうのだから。

近年のディズニーアニメ映画において、明確な形をもたない、何かのメタファーのような魔物と戦う風潮があり、今作は正に「何か」なのである。

今作の場合、明確な敵を用意することこそが、アジアが敵対視する国の象徴とも受け取られる可能性もある。

「007」シリーズのように、明らかにロシアや北朝鮮といった国を直接的にも感覚的にも連想させることがいよいよ難しくなってきたということを世界のイメージを操作してきたディズニー映画から感じるようになってしまうとは...

石を巡って争いが生じ、その結果、新たな脅威が生まれるというプロットが 「アベンジャーズ」における「インフィニティ・サーガ」のようであり、石像にされてしまった者たちを救い出そうとする流れまでも似ているようだが、王道のストーリー展開ということで、そこは仕方ないのかもしれない。

ちなみに「アベンジャーズ」と同じく、元に戻った人との時間格差問題がありそうなのだが...そこはスルーしている。

作品全体のバランスや感動、メッセージ性は、なんだかんだ言っても流石ディズニー映画らしく、上手くまとまっていて、非常にクオリティの高い作品だ。

『モアナと伝説の海』の流れをくんだ、水を使った神秘的な表現も見どころのひとつである。

劇中の分断されていた国が中国における国内分断のメタファーだと思うが、中国忖度があったとしても、ディズニーの根っこの部分は限定的ではなく、世界基準にメッセージ性を届けたいと思っていると信じているだけに、アジア系だけにしない方が良かったような気がする。

映画を製作するには、膨大な費用がかかるうえで、特定の国に忖度が必要なことというのは、自国の資金だけで動かせない状況においては必要だと思う。

やるにしても、あからさまにやらないで欲しいところだが、そこにポリコレが被さることで。アジア系ならアジア系で固めないといけないような妙な風潮によって、逆に忖度しているように感じさせてしまうのも、また問題である

点数 80

この映画語らせて!ズバッと評論!!カテゴリの最新記事