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この映画語らせて!ズバッと評論!!『ホテル・ムンバイ』決してアクション映画ではない、恐怖のテロリズム!!

作品情報

2008年のインド・ムンバイ同時多発テロでテロリストに占拠されたタージマハル・パレス・ホテルでの人質脱出劇を、『LION ライオン 25年目のただいま』『スラムドッグ$ミリオネア』のデブ・パテル主演で映画化。2008年11月、インドを代表する五つ星ホテルが500人以上の宿泊客と従業員を人質にテロリストによって占拠された。宿泊客を逃がすために、プロとしての誇りをかけてホテルに残ったホテルマンたち。部屋に取り残された赤ちゃんを救出するため、決死の覚悟で銃弾の中へと向かう父と母。テロリストたちに支配される極限の状況下で、特殊部隊の到着まで数日という過酷な現実を前に、人々の誇りと愛に満ちあふれた脱出劇が描かれる。パテルが宿泊客を守ろうとするホテルマン役を演じるほか、『ビリーブ未来への大逆転』『ワウンズ: 呪われたメッセージ』 のアーミー・ハマーがアメリカ人旅行客役で出演。監督はこれまでも数多くの短編作品を手がけ、本作が長編初監督作となるオーストラリア出身のアンソニー・マラス。

『ホテル・ムンバイ』レビュー

決してアクション映画ではない、恐怖のテロリズム

2008年に起きたムンバイ同時多発テロによって、タージマハル・ホテルに閉じ込められた500人以上の宿泊客とホテルマンの脱出劇。

このキャラクターはこの俳優が演じているから、死なないだろうという理論が全く当てはまらず、安心感を全く感じさせてくれない緊迫感の連続で胃が痛くなる。

アクション映画であれば、客と協力してテロリストを撃退するという展開になるのだろうが、この映画はテロの恐怖を容赦なく描いており、いかに戦うかではなく、いかに生き残るか、大切な人の命をどう守るかということに重点をおいており、リスクはおかせない

リスクをおかしたキャラクターはことごとく殺されてしまうし、それまで生きていても次のシーンでは殺されてしまうかもしれないから全く油断ができない。

外国人の目線から見た宗教観の違いによる恐怖

環境によって人は作られる。「環境のせいにするな」と言う人もいるが、生まれながら生きていくためには、選択肢がひとつしかなく、子供のころから人を殺すことが「救い」や「罰」だと教え込まれ、洗脳されて育ったとしたら、この映画でホテルや駅を襲撃する少年に罪はないなんてとても言える状況ではないが、その背景に潜む大きな悪、そして負の連鎖は両者にとって悲惨さしか残らない。テロリストが少年ということに、完全な悪ではない…だけれども…という恐怖。

『ホテル・ムンバイ』では視点はあくまで襲撃される側の人々の視点に徹していて、テロリスト側の事情を変に描いておらず、主人公はインド人という設定ではあるが、ホテルが舞台ということで多くの目線が外国人の目線から見た宗教観の違いによる恐怖も反映されている分、より恐ろしく、それは人間であっても得体のしれない存在に見つかるかもしれないという恐怖の描き方はホラー映画の様でもある。

テロリズムを描いた作品では一級品の緊迫感

マシンガンを持つテロリストに対して、ピストルで立ち向かうという、警察のポンコツぶりは、警察は事態を収拾できないという、テレビのニュースが物語っている通り、あまり役にたたない。だから警察が来たって言っても何も安心できないのだ。

エンターテイメントよりもテロの恐怖を映し出した作品としては、近年の作品で比べると、同じく何者かわからないテロリストによる襲撃を描いた 『ウトヤ島、7月22日』 では物足りなかったテロリストへの恐怖感はすごく感じられる。

ウトヤ島、7月22日』の場合は全くと言っていいほど、テロリストが何かわからないため、「何かわからない者」から襲われる恐怖というのは際立っているが、それは幽霊やモンスターの様に少し宙に浮きすぎている存在の様にも思える。

しかし、「何かわからない人間」から襲われる恐怖という正にテロリストへの恐怖というのは、『ホテル・ムンバイ』の方が勝っていると言えるだろう。

英語が話せるインド系俳優として貴重な存在

主演のデーヴ・パーテルは『スラムドッグ$ミリオネア』『 LION ライオン 25年目のただいま 』を観てもわかる通り、アメリカ、イギリスなどにおいて英語が話せるインド系のとしては貴重な存在となっているだけに、アメリカやイギリス映画で主人公はインド系となった場合、真っ先に候補に挙がる俳優であることは間違いない。

点数 80点

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