作品情報
おもちゃの世界を舞台に描くピクサー・アニメーションの大ヒットシリーズ「トイ・ストーリー」の第4作。ウッディたちの新しい持ち主となった女の子ボニーは、幼稚園の工作で作ったフォーキーを家に持ち帰る。ボニーの今一番のお気に入りであるフォーキーを仲間たちに快く紹介するウッディだったが、フォークやモールでできたフォーキーは自分を「ゴミ」だと認識し、ゴミ箱に捨てられようとボニーのもとを逃げ出してしまう。フォーキーを連れ戻しに行ったウッディは、その帰り道に通りがかったアンティークショップで、かつての仲間であるボー・ピープのランプを発見する。一方、なかなか戻ってこないウッディとフォーキーを心配したバズたちも2人の捜索に乗り出すが……。ボー・ピープが『トイ・ストーリー2』以来19年ぶりに再登場を果たすほか、物語の鍵を握るフォーキー、ふわもふコンビのダッキー&バニー、かわいいアンティークのおもちゃギャビー・ギャビーなど新キャラクターたちも続々と登場。数々のピクサー作品でストーリーボードアーティストを担当し、『インサイド・ヘッド』では脚本にも参加したジョシュ・クーリーが長編初監督を務める。
『トイ・ストーリー4』レビュー
『トイ・ストーリー4』って作らないって言ってなかった?
『トイ・ストーリー3』の公開当時、『トイ・ストーリー』はこれで完結し、続編は絶対に作らないとまで言っていたピクサーだったが、物語の質よりも興行に目がくらんだのか…まさかの4作目が製作された。
とは言え『謎の恐竜ワールド』や『トイ・ストーリー・オブ・テラー』『ハワイアン・バケーション』といった短編を『トイ・ストーリー3』の後に多く製作しているだけに、すでに説得力もなく、今回で完結というのも信用ならない。
今回は『トイ・ストーリー3』での疑問点として挙げられていた、ボー・ピープの行方がついに明らかになる。
『トイ・ストーリー』『トイ・ストーリー2』でウッディとボーは恋愛関係のように描かれていたが、今回は数年ぶりの再会して嬉しい反面、空白の期間で変わってしまったボーに戸惑うウッディの複雑な感情とボーがかつて誰かのおもちゃであったことへの喜びを思い出していくという題材は子供向けなのにも関わらず、濃厚な恋愛ドラマの様な心情の変化が全体を通して描かれていて、ある意味子供向けではない。
ウッディの行動にイラつくボーを見ているとつらい数年間を過ごしてきたのだろうということが感じられて複雑な気分になるのだが、それこそがウッディの心情なのだ。
前はキスしてた記憶があるのだが、今回は最後の最後までキスしないということにも「これでよかったのか」という戸惑いと、まだ2人の間にあるもやもや感がぬぐい切れずにいるというのも何だか生々しく感じたのだが、別にそこまで考えていないのかもしれない。
今までのおもちゃとしての概念の崩壊によって向かう方向は何なのか…
前半では、ボニーがゴミで作ったおもちゃのフォーキーの面倒を見ることやおもちゃとしてのアイデンティティを教えるウッディは「おもちゃとはこうあるべき」という信念というか概念をもっていたところに突きつけられる「おもちゃだって自由に生きていい」という、想像していなかった概念が急にウッディを襲う。
後半では、一生誰かのおもちゃとして生きていくしかないと思っていたウッディに別に自由に生きていいよという、これまでと前半でも描いていたテーマを覆すかの様な概念の崩壊は作品の趣旨や方向性が何なのかということ観ている側に混乱させてしまっていることは明らか。それが賛否両論と言われている原因だと思う。
おもちゃではなく、別の生き物として生きていくという選択肢はもはや作品のテーマから足が出てしまっているだけに反則的と言ってもいい。
作品としてはよくまとまっているし、コミカルなシーンも観ていて単純に楽しく「わかりやすい」のだが製作サイドの持つ作品の趣旨の全体像としては「わかりにくい」と言えるだろう。
ウッディとバズ、レギュラーメンバーへの友情は蔑ろに
ウッディとバズは親友関係にあるものだと思っていたし、スリンキーとかレックスとか1作目からのキャラクターの扱いが雑。
ボーと新たな世界を見ることの天秤にかけるべきだったのは、バズやレギュラーメンバーとの友情であるべきだったと個人的には思うだけに、ウッディの決断どうこうの前にその過程が別の部分に焦点を当てるべきだったと思う。
ちなみにミスター・ポテトヘッドの声を担当していたドン・リックルズは2017年に亡くなっているがデジタル処理で過去のセリフをつなぎ合わせている。
点数 70点
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