作品情報
カジノ化計画から田舎町は守れるか?あの子は落とせるか?恋にカジノに熱くなる夏! チェース・リバーは記念館で働くほど歴史的な自分の住む町を愛していた。だがそんな田舎町は目立った観光施設などもなく町の財政は悪化をたどる一方であった。そこで市長はインディアンの一族から依頼があった町にカジノを作るという計画を実行しようとするのであった。だがカジノ建設は町の復興にはつながる一方、歴史ある土地を破壊することにもなってしまう・・・。カジノ建設を阻止しひと夏の恋のギャンブルにも勝つことができるか・・・・
監督・脚本・出演
監督:タルメージ・クーリー
脚本:アニー・ノチェンティ
出演:
『遠距離恋愛 彼女の決断』『ジェイ&サイレント・ボブ リブート』ジャスティン・ロング
『オフロでGO!!!!! タイムマシンはジェット式』『ウォーム・ボディーズ』ロブ・コードリー
『アントラージュ★オレたちのハリウッド:ザ・ムービー 』『キャデラック・レコード ~音楽でアメリカを変えた人々の物語~』エマニュエル・シュリーキー
『シンデレラストーリー3:ワンス・アポン・ア・ソング』『マー ―サイコパスの狂気の地下室―』ミッシー・パイル
発掘!未公開映画研究所とは?
宗教性の問題、出演者の知名度、お笑いの感覚の違い…などなどの理由によって、日本では公開にいたらない作品が多く存在する。アカデミー賞にノミネートされている作品でも未公開作品は多い。
それもそうだろう、逆にアメリカやフランスで日本の映画が何でも公開されていると言えばそんなわけもなく、全体的に見て1割にも満たないだろう。
日本はそんな中でも割と海外の作品を公開している珍しい国であって、そんな中でもやっぱり公開されない映画というのは山のように存在する。
「発掘!未公開映画研究所」はそんな映画を発掘していくというもので、その中でも更に知名度が低いものを扱っていくつもりだが、必ずしも良作ばかりではない、中には内容がひど過ぎて公開できなかったものもあるのでご注意を!!
今回紹介するのは『カジノをぶっつぶせ! -僕と彼女のド田舎生活- 』
短評
ジャスティン・ロングが2009年に出演した独立系映画である。一応セルもレンタル版も日本でリリースされているが、なかなか観るのに苦労する作品かもしれない。
2008年の映画『ラスベガスをぶっつぶせ!』に便乗して付けられた邦題ではあるが、ギャンブルをして一攫千金を目指すようなゴージャスな映画では決してなく、全体的に地味中の地味な作品なのだが、実はアメリカだけならぬ、世界が抱える田舎の空洞化を描いた作品なのだ。
舞台となるのは、アメリカの廃れてしまった架空の田舎町パトリオット(こんな名前の町があるか!!と言いたくなる)
パトリオットでは企業は次々と倒産し、商店街や観光業も絶望的…だけど土地はたくさんあるということでカジノ建設の話が舞い込んでくる。
大型施設やテーマパークなどが建設されることで、町の人々が反対デモをするという展開は、ドラマや映画で多く描かれてきたが、今作では、町の人々はカジノを作ってほしいと願っている。
カジノなんかに頼らなくても再建できる望みがあれば、そうしたいが、現状的に不可能。となると生きていくには、大きいものには巻かれるしかないわけだ。次第にカジノが最後の希望だと町の住人たちは一段となり、なんとかカジノを建設しようとする。
パトリオットには、かつてアメリカの歴史的に知られる戦争(これも何の戦争かは語られない)の古戦場があり、その周辺にある小さい記念館で働いているジャスティン・ロング演じるチェースが物語の主人公である。
チェースは町を愛している。歴史深きパトリオットをそのまま活かした姿で、活気を取り戻したいと願うが、若者たちは、都会に向かい、どんどん空洞化していく一方。チェースの言っていることは、町の誰もが願っているかもしれないが、現実にはとても厳しい。
映画的に考えるのであれば、そんな少数派の意見が町を動かし、感動を呼ぶかもしれないが、今作は徹底して現実を突きつけてくるのだ。親友も無気力、彼女ができたかと思えば何やらワケあり...と結果的にほとんど味方がいない状況でなんとかしようとしても空回りし続ける。
最終的に出した決断、町民たちが迎える救いようのない展開...何から何まで現実の田舎町を観ているようでつらい。
ジャスティン・ロングが仮装したり、コメディ俳優を多数起用しているだけにコメディ色はあるものの、「アメリカン・ドリームなど田舎には存在していない」と言われている様であり、リアルな現実過ぎて笑っていいのかわからない映画である。
ドキュメンタリー映画『行き止まりの世界に生まれて』でも描かれていたラストベルト。日本でも消えてしまう集落。いくら歴史的に価値がある土地であっても、周りに価値を見出してもらわなければ消えていってしまう。時代の流れと言ってしまえばそれまでかもしれないが、背を向けないで戦った若者の末路としては悲しすぎる。
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