作品情報
ジャック・カニンガムはかつて順風満帆の人生を送っていた。高校ではバスケットボールの天才として鳴らし、大学へは全額支給の奨学金が約束されていた。ところがなぜか突然、バスケットコートから去り、輝かしい未来を自ら棒に振ってしまう。それから数年が経った今、ジャックはやりがいのない仕事に行き詰まり、酒に溺れ、それがもとで結婚も人生への希望も失っていた。そんな折、彼は母校からバスケットボールのコーチを頼まれる。往年の黄金時代の見る影もない落ちぶれたチームの再生をジャックは渋々引き受けるが、そのことに誰よりも驚いたのがジャック自身だった。選手たちがチームとしてまとまり、勝ち始めるにつれ、ようやくジャックにも、自分の人生を狂わせた悪魔と戦う覚悟ができたかのようにみえた。だが、果たしてそれだけで空白を埋め、心の古傷を癒やし、もう一度やり直すことができるのだろうか。
監督・脚本・出演
監督: 『ミラクル/ミラクル 1980の奇跡』ギャヴィン・オコナー
脚本:『ラン・オールナイト』 ブラッド・インゲルスビー
出演:
『デアデビル』『ジェイ&サイレント・ボブ リブート』ベン・アフレック
『ベガス流 ヴァージンロードへの道』『ブラインドスポッティング』ジャニナ・ガヴァンカー
『エンド・オブ・ハイスクール』『グッド・ボーイズ』ミカエラ・ワトキンス
『世界一不幸せなボクの初恋』『バチェロレッテ あの子が結婚するなんて!』ヘイズ・マッカーサーなど
発掘!未公開映画研究所とは?
宗教性の問題、出演者の知名度、お笑いの感覚の違い…などなどの理由によって、日本では公開にいたらない作品が多く存在する。アカデミー賞にノミネートされている作品でも未公開作品は多い。
それもそうだろう、逆にアメリカやフランスで日本の映画が何でも公開されていると言えばそんなわけもなく、全体的に見て1割にも満たないだろう。
日本はそんな中でも割と海外の作品を公開している珍しい国であって、そんな中でもやっぱり公開されない映画というのは山のように存在する。
「発掘!未公開映画研究所」はそんな映画を発掘していくというもので、その中でも更に知名度が低いものを扱っていくつもりだが、必ずしも良作ばかりではない、中には内容がひど過ぎて公開できなかったものもあるのでご注意を!!
今回紹介するのは『ザ・ウェイバック』
短評
アメリカではピクサー映画『2分の1の魔法』と同じ週に公開されて、週末興行収入ランキング初登場3位と好調だったのだが、新型コロナウイルスの影響を受けてしまった作品でもあり、日本では配信スルーとなった。
2020年は未公開映画が過去最大の年となりそうだ...
弱小チームと落ちこぼれだけど、実は昔凄かったコーチとの組み合わせによる化学変化映画というのは、『がんばれ!ベアーズ』『コーチカーター』『メジャリーグ』などなど…王道中の王道ではあるが、今もなお、そういったテイストの作品が定期的に作られているのは、やはり人間はベタな人間ドラマに定期的に感動したいのだ。
今作もその手の王道的スポーツ映画かと思ったら大間違いだった。それは、なかなか重圧なテーマ性を秘めているからだ。
「感動」と「興奮」のメリハリがしっかりとされていて、 監督は『ミラクル/ミラクル 1980の奇跡』(2004)や『ウォーリアー』(2011)などスポーツ映画を手掛けてきたギャヴィン・オコナー、脚本は父と弟がバスケットボールのコーチという環境にあるブラッド・インゲルスビーという、スポーツ映画としては、ベストな環境があるだけに非常にバランス良く構築されているが着地点は決して明るいものではない。
主演がベン・アフレックということは、今作にとってかなり大きな役割を果たしている。
ベンが演じるジャックは、アルコール依存で離婚しているという設定なのだが、今作の製作が開始された頃、正にベンが実生活でアルコール依存と元妻ジェニファー・ガーナーとの離婚問題を抱えていた時期と重なるのだ。
年々、渋さを増してきているベンではあるが、今作でみせる寂しい表情や重圧を感じられる演技はプライベートが直に反映されているからだ。ベン本人も今作が一種のセラピーになったと答えているほどだ。
座って遠くを見つめるジャックは、もはやベン・アフレックそのものでしかない。
それと同時にプロになることへの困難さが容赦なく描かれる。学生時代はエースなどと言われ、期待され、推薦や奨学金でスポーツ進学もできるのだが、実際にプロとして活躍できるのは一部であり、ほとんどの選手はスポーツに費やしてきた時間がそのまま空白感に変わってしまうことがあるのだ。そして低賃金や肉体労働という恵まれているとは言えない労働環境で働いているOBたちは、子供に同じ思いをさせたくないと反対する。
スポーツ選手というのは、栄光の後に待っているのは、衰退でしかない。これは日本も同じでスポーツ選手というのは、現役中にタレントやコーチなどに転向の準備をしていなければ、いざ引退した際に路頭に迷ってしまうし、元アスリート専門の職業紹介所があるほどなのだ。
ジャックも学生時代では注目され、地元では名が知られているほどで、プロを目指せた腕前であったが、父親からのプレッシャーによって、バスケットボールを辞めてしまったことで、ジャック自身もバスケットボールには良い思い出がない。
しかし、若い世代に教えているうちに「夢」とは何かという漠然としたものではなく、現実的に競争率の激しいスポーツ業界での成功にかけて人生を消費することは、彼らにとって果たして正しいことなのかと思いながらも、バスケットボールをしながら輝く選手たちに心動かされていく。
しかし、ジャック自身の問題や息子を亡くした過去がトラウマとなって、アルコール依存は克服することがなかなかできないという、とても重圧な人間ドラマであって、愛や希望があふれたサクセス・ストーリーやスポ魂的感動ものを想像していると、夢を見て失敗するぐらいなら、挑戦しない方が身のため、スポーツ業界において成功の先には安定がないという現実社会の厳しさが絶えず突き刺さる。
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