作品情報
『インデペンデンス・デイ』『2012』『ホワイトハウス・ダウン』のローランド・エメリッヒ監督が、第2次世界大戦(太平洋戦争)のターニングポイントとなったミッドウェイ海戦を描いた戦争ドラマ。1941年12月7日、日本軍は戦争の早期終結を狙う連合艦隊司令官・山本五十六の命により、真珠湾のアメリカ艦隊に攻撃を仕掛ける。大打撃を受けたアメリカ海軍は、兵士の士気高揚に長けたチェスター・ニミッツを新たな太平洋艦隊司令長官に任命。日米の攻防が激化する中、本土攻撃の脅威に焦る日本軍は、大戦力を投入した次なる戦いを計画する。真珠湾の反省から情報戦に注力するアメリカ軍は、その目的地をハワイ諸島北西のミッドウェイ島と分析し、全戦力を集中した逆襲に勝負をかける。そしてついに、空中・海上・海中のすべてが戦場となる3日間の壮絶な戦いが幕を開ける。キャストには『デッドプール』のエド・スクレイン、『ゾンビランド:ダブルタップ』ウッディ・ハレルソン、『侵入する男』『僕のワンダフル・ジャーニー』のデニス・クエイド、豊川悦司、浅野忠信、國村隼ら実力派が海を越えて集結。
『ミッドウェイ』レビュー
冒頭で山本五十六とエドウィンの会話シーンからはじまる。かつては、何気ない会話をしていた2人が敵同士となってしまうという、戦争がもたらす悲劇として、日本とアメリカの2つの視点に枝分かれしていくのかと思わせる出だしはよかったが、人間ドラマとしてはそこがピークだった。
というのも、両視点で描かれていると言っておきながら、8割以上の割合でアメリカに寄り添った内容だからである。
クリント・イーストウッドが『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』をそれぞれの視点から描いてみせたが、その2本を1本に凝縮したような作品として完成させるだけの器用さなどがないことは、わかっていたはず。
ローランド・エメリッヒにそこまで求めてはいけない。単純に娯楽アクションとなっていれば良しとするしかないという、強制に近いハードルの下げ方をしないといけない監督のひとりである。
ローランド・エメリッヒには、人間ドラマなぞ描き出すことはできない。毎回勢いに任せたキャラクター構造で正にブロックバスターが似合う監督だからだ。今回は、がんばって人間ドラマを描こうとしていることは評価できる。
しかし、上手くはいっていない…非常にバランスが悪いのだ。
アメリカ人たちには、バックボーンが用意されている。それは、守るものがあったり、友情があったり、上司と部下との間での信頼があったり…と様々な共感ポイントがあり、感情移入しやすい、人間味あふれるキャラクター構造に設定されているのに対して、日本人側は、山本五十六などの上の人達が少しだけ描かれているだけで戦場で戦っている兵士たちには、全くと言っていいほどドラマ性が用意されていない。
後半になって、「まずい!日本側描いてないじゃん!!」と思ったのか、畳みかけるようにサブキャラクターに人間味を持たせようとするものの、あまりにも無理矢理感があり過ぎて、アメリカ人と日本人のバックボーンが対比になっていない。
前半は戦闘機に日本人の気配が感じられないほど。機械や異星人と戦っているような描写かせ連続して、どうも人間対人間のアクションには感じられず、日本人ながらアメリカ側を応援したくなってしまう。
大切なものを守るためという、目指すところは同じだというのに、同じ人間同士で戦わないとならないという悲劇が戦争というものだが、両視点から描くとしたら、自然とそこに向かっていくのだろと思うのだが、すんなりと行かないのが実にエメリッヒらしいと言うべきだろうか。
エメリッヒは大人しくディザスタームービーを撮っていれば良い。
点数 74
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