ラジオ番組「バフィーの映画な話」Spotifyなどで毎週配信中!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『フェアウェル』オークワフィナの素朴なイメージがどこにでもある物語を彩らせる!!

この映画語らせて!ズバッと評論!!『フェアウェル』オークワフィナの素朴なイメージがどこにでもある物語を彩らせる!!

作品情報

中国で生まれアメリカで育ったルル・ワン監督が自身の体験に基づき描いた物語で、祖国を離れて海外で暮らしていた親戚一同が、余命わずかな祖母のために帰郷し、それぞれが祖母のためを思い、時にぶつかり、励まし合うながら過ごす日々を描いたハートウォーミングドラマ。ニューヨークに暮らすビリーは、中国にいる祖母が末期がんで余命数週間と知らされる。この事態に、アメリカや日本など世界各国で暮らしていた家族が帰郷し、親戚一同が久しぶりに顔をそろえる。アメリカ育ちのビリーは、大好きなおばあちゃんが残り少ない人生を後悔なく過ごせるよう、病状を本人に打ち明けるべきだと主張するが、中国に住む大叔母がビリーの意見に反対する。中国では助からない病は本人に告げないという伝統があり、ほかの親戚も大叔母に賛同。ビリーと意見が分かれてしまうが……。『オーシャンズ8』『クレイジー・リッチ!』のオークワフィナが祖母思いの孫娘ビリーを演じる。

『フェアウェル』レビュー

監督・脚本を務めたルル・ワンの実体験をモデルに描いた人間ドラマではあるが、祖母がガンで余命宣告を受けるという内容自体は、映画やドラマ的には、特別珍しいものではなく、その中で描かれる人間模様というのも、各国の映画やテレビ、小説などでも使い古されたネタである。

では、今作がどうして多くの批評家や映画賞などから評価されたかというと、全体的な物語への共感や感動とは別に中国、アジアの国の独特の風習や文化に興味を持つ人が多かったからだろう。

クレイジー・リッチ!』で社会的にも映画業界的にも圧倒的な地位を築いたアジア系によるアメリカ映画。『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 Birds of Prey』もアジア系監督のキャシー・ヤンが抜擢されたり、アジア系が扱われているわけではない映画などでも、普通にアジア系俳優がキャスティングされるようになった。

ごくごく近年までアジア系作品というのは、観られる機会はあったのだろうが、どうしても仕切りの高い存在であったが、アメリカ映画ということで、今までアジア映画に触れてこなかった層が観るようになったことで、アメリカ人やヨーロッパ人視点から見た、知らなかったアジアの国のコミカルだったり、ミステリアスだったりする独特の文化がウケているのだろう。

今でこそ、トランプ大統領が新型コロナウイルスを中国に責任転換していたりもするのだが、現在のハリウッド映画を牛耳っている中国資本、中国マネー。テレビや音楽業界は韓国ドラマやK-POPがトレンドだったりもする。『トロールズ ミュージック・パワー』にはK-POPトロールが登場するほどだ。

中国や韓国への興味というのは、近年で一番良い時期だったのだ。

知らなかった世界や文化を知ることができるのも映画の醍醐味でもあり、そういった部分では、しっかりと機能している作品と言ってもいいだろう。

ラッパーの印象よりも、すっかり女優という印象が強くなってきたオークワフィナが主演というのは、独特の味があって良い。オークワフィナは、アジアンビューティーでもなく、言ってしまえば、どこにでもいそうなおばさん顔であるし、「2児の母親です」と言われても全く違和感がなく、猫背気味である。

今まではファンキーな役が多かったりしたが、『エンド・オブ・ハイスクール』でみせたような、もともとのオークワフィナの素朴なイメージを利用して、自然体でどこにでもあるような物語という共感をよびやすいキャラクター構造は、どこにでもあるような物語でもありながら、そこにある、それぞれの家族がもつドラマ性に上手くマッチしているのだ。

いとこの結婚相手役を日本人女優の水原碧衣が演じていることにも注目してもらいたい。『パッチギ!』なんかにも出演していた中国を中心に活躍している日本人女優だが、今作では唯一の日本人女優(結婚式のエキストラ以外で)というアウェー感の中での雰囲気というのを逆に上手く利用して、ぎこちなさの中にある異民族同士、国が違う者同士の結婚というのを静かに描き出しているのだ。

点数 74点

この映画語らせて!ズバッと評論!!カテゴリの最新記事