作品情報
巨匠ウッディ・アレン監督が、『レディ・バード』『ストーリー・オブ・マイライフ わたしの若草物語』のティモシー・シャラメ、『ティーンスピリット』『マレフィセント2』のエル・ファニング、『ドクター・ドリトル』『デッド・ドント・ダイ』のセレーナ・ゴメスら人気若手俳優たちをキャストに迎えメガホンをとったロマンティックコメディ。大学生のカップル、ギャツビーとアシュレーは、ニューヨークでロマンチックな週末を過ごそうとしていた。そのきっかけとなったのは、アシュレーが学校の課題で有名な映画監督ローランド・ポラードにマンハッタンでインタビューをするチャンスに恵まれたことだった。生粋のニューヨーカーのギャッツビーは、アリゾナ生まれのアシュレーにニューヨークの街を案内するためのさまざまなプランを詰め込む。しかし、その計画は狂い出し、思いもよらないさまざまな出来事が巻き起こってしまう。
『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』レビュー
一時期はニューヨークの男女物語といえばウディ・アレンと言うほどであったが、『マッチポイント』以降、ヨーロッパが舞台となった作品の比率が上がってしまった。2013年の『ブルージャスミン』では、一旦ニューヨークに舞台を戻すものの、再びニューヨークを離れてしまっていたが、また戻ってきた…とウディ・アレンからニューヨークを切り離すことなどできるはずがない。
しかし、今回引っ提げてきたのは、ティモシー・シャラメやエル・ファニング、セレーナ・ゴメスといった、若者ウケしそうでティーンムービーのようなキャスティングによる恋愛映画で主演の平均年齢が圧倒的に低いが、近年のウディ・アレン作品の中では嫌いではない…というか上手くできている。
特にエル・ファニング演じるアシュレーの心情になって考えると楽しい映画である。映画好きで映画関係者にインタビューできて、更に関係者やセレブたちに関わるチャンスがあるとしたら、その波に乗らないわけにもいかない。
心の隅では気になっているが、彼氏とは、あまり長続きもしないだろうと処理してしまっているアシュレーにとって、いつか別れる彼氏よりキラキラしたショービズの世界に留まりたいと思うのは、ごく自然の流れである。
一方、ティモシー・シャラメ演じるギャツビーもギャンブルで生活していて、大学卒業後でもやりたいことを模索中でフラフラしている状態でアシュレーを愛してはいるのだが、思い通りに行動してくれないアシュレーよりも、何かと都合のよいセレーナ・ゴメス演じるチャンになびいていく。
実は、何気ない様々な出来事の中で現代社会の男女の恋愛観や価値観のフラットな部分を誇張し、皮肉的に描いているという点では、ウディ・アレンの作家性は健在であり、新しい世代に合わせて、描き方もアップデートしていることからも、まだまだ現役と言って間違いないだろう。
雨の日のニューヨークをフィールドとして、エル、ティモシー、セレーナそれぞれの見せ場がとてもバランス良く散りばめられていて、今まで「こういうシーンを観たかった」というシーンを見事に取り入れてくれているため、俳優目当てで観ても楽しめる映画に仕上がっている
自主映画の撮影クルーの監督として登場する、グリフィン・ニューマン演じるジョシュの見た目が正に若いころのウディ・アレンのようで、映画監督という役柄的にもウディ自信の投影にも感じられる。今後、グリフィン・ニューマンはウディ・アレン作品の常連となる可能性は高い。
ウディ・アレンによる過去におこした、プライベートでの虐待問題の告発によって、アメリカでは上映中止という残念な状況となってしまっているが、映画自体に罪はないので、映画としてアメリカでも正当な評価を受けてもらいたいものだ。
点数 80点
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